ファーストフード店・カフェ
客席の密度が高くなりがちな、ファーストフード店や喫茶店等の例を紹介します。
飛沫感染防止と換気量により感染防止を図った例です。隣席間のスクリーンにより、飛沫感染を防止しています。
気流アレンジメントを行わない場合、整流されない気流の逆流に乗った高濃度エアロゾルによる感染のおそれが生じますので、座席間のスクリーンには、十分な高さと奥行が必要になるものと考えられます。上図のように、各席の前方にもスクリーンを設置し、それぞれにコの字形のブースを構成させると、室内の気流を遮断しブース内の空気を一定程度滞留させることができるため、感染防止効果が期待できます。
尚、テーブルやスクリーン内部は、飛沫やエアロゾルが付着するため、客が入れ替わる度に消毒する必要があります。
個別ブースを規格化し家具のように大量制作し、汎用利用可能なように流通させると、社会全体で、感染症に対する早急なレジリエンス向上を図れるものと考えます。パーティションの場合、システム化し、汎用的に様々な条件に適用できる構造とすると良いかと思います。
気流アレンジメントを行わない場合、基本的に、室内に拡散したエアロゾルの濃度を薄めて感染力を低減させることになりますが、座席数や在室者数に応じた換気が必要となります。
※基本的に、既存の換気設備では必要換気量が不足するため、換気量を大きくする工事等が必要となります。また、感染力を評価した上での具体的な必要換気量は今のところ不明なため、極力気流アレンジメントと併用することが望ましいと考えます。
気流アレンジメントによる客席構成例
ここからは、気流アレンジメントにより感染防止を図った客席構成例を紹介します。
窓際に客席を配置し、気流アレンジメントにより感染防止を図った例
従来、建物外周部(ペリメーターゾーン)の窓際には、日射熱や外部からの熱負荷を打ち消す為、吹出口を設けるのが一般的でした。 しかしながら、省エネ上は、熱負荷を打ち消すより、上述の局所排気のように、排気口を設けて窓際付近の空気を排出した方が有利となります。また、気流アレンジメントによる感染防止の視点からは、吹出空気は風速を抑えたアンビエント空調とし、噴流によりエアロゾルが拡散しないように計画することが肝要となります。
大きな共有テーブル席の例
スターバックスなどで見られる大きな共有テーブルへの気流アレンジメントの適用例です。
テーブル中央に、向かい合う客席同士による飛沫感染を防止するスクリーンを設置し、直上に風量の大きな排気口を設置することにより、図示する気流を生み出しやすくなります。
このスクリーンは、室内全体の気流も遮りますが、高さが高いほど、当該気流が越流しにくくなり、隔てられた空間内で対流を起こしやすくなるため、排気の上昇気流を生み出しやすくなるものと考えられます。
但し、この図のような開放的な構成だけでは、安定した排気の一方向流は形成されにくく、隣席同士のスクリーンもないため、隣席間は十分な距離を置いたり、マスクの着用等の対策を併用する必要があるかと思われます。
客席相互の間に、床面から天井面まで達するスクリーンを配置した例
客席相互の飛沫感染を防止することのみならず、気流の対流等の運動を抑制して、給気口側から排気口側への一方向の流れに整流する効果を期待することができます。
造作カウンターに排気システムを組み込んだ構成例を示します。
造作カウンターに排気ダクトおよび排気スリットを設け、排気による一方向流が、安定した一定以上の風速となる範囲内に客を位置させることにより、客の呼気(吐く息)を即座に排出します。
隣席間および向かい合う客席間にはスクリーンが設置され、飛沫や高濃度エアロゾルを遮断します。
吐き出された客の呼気(吐く息)や周囲の空気は、造作カウンター下部の排気ダクトに設けられたスリット、および、カウンター上のバックボード頂部に設けられた笠木下のスリットにより、即座に吸引され排出されます。
排気スリットは、呼気を吸い込むという視点ではカウンター上のみの設置で良いかもしれませんが、このようにカウンターの上下に設置し、足元まで気流を循環させることにより、とりこぼしなく、安定した一方向流を維持し、かつ、快適な空調効果を提供することができるのではないかと考えています。
この図の例では、カウンター下の横引き枝排気ダクトは、横引き主排気ダクトに合流し、柱型として設置された縦ダクトにより天井内に誘導され、通常のダクトルートに合流させる構成としています。
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