乗り物
建築物の屋内同様、乗り物にも換気設備があります。
乗り物の場合、建築物と比較して、圧倒的に収容人員の密度が高いため、建築物より大きな換気量を設定しているものと思われます。
しかしながら、コロナウィルスの感染防止の視点からは、既設の換気設備だけではやはり換気量が不足するのではないでしょうか。
車やバス、鉄道車両の多くは、窓を開けて換気をすることができます。春秋の中間期は、暑すぎず寒すぎず、十分に換気をすることで空調に代えることができるため、窓を開けて運転するだけで、感染防止を図りながら、不満のない空気環境を提供することができます。
しかしながら、梅雨に入ると、雨が降りこむため、窓を開けての運転が難しくなります。
梅雨入り前にコロナウィルスの流行が終息して再流行のおそれが無くなった場合は問題無いかと思いますが、そうでない場合、窓を閉めて運転することで、再び感染のリスクを増大させるのではないでしょうか。
こういった見地から、乗り物内における感染防止のための換気方法を検討し、提案したいと思います。
車・タクシー
乗用車の場合、窓ガラスの結露防止(解消)の為、大きな風量の換気設備が装備されています(エアコンの外気導入モード)。このため、換気量自体は十分かもしれませんが、非常に狭い空間内に複数人が近接した状態で乗車するため、窓を開け、走りながら空気を入れ替える方が安全でしょう。
最近は減少しましたが、雨の中でも一定量窓を開けて換気することができる、バイザーの設置が有効かと考えます。喫煙者の方なら、圧倒的な便利さをご存知かと思います。
タクシーの場合、通常装着されていると思いますが、後部座席の窓にもバイザーを設置すると、前後の窓を開けて、室内の空気を入れ替えるように換気できるため、より良いかと思います。
鉄道・バス
窓を開けての換気
5月現在の時点で、少なくとも首都圏の鉄道会社の多くは、コロナウィルス感染防止のため、自主的に窓を開けて換気しながら運行しているようです。今日の感染者数の抑制の成功の背景には、この取り組みによる効果もあるのではないでしょうか。
そこで、梅雨以降も窓を開けて換気を継続する方法として、車の窓のバイザーのようなものを鉄道車両に取り付ける方法を提案します。
窓のサッシの奥行きが大きい場合、平板に近いポリカーボネートの成形品をサッシの溝内に嵌め込み設置することもできるかと思います。
既設の空調換気設備の改変
盛夏は暑すぎて換気だけでは当然不十分ですが、換気(排気)により熱を排出させながら冷房の強風を直接乗客に吹き付けるように気流を整流させると、感染防止と冷房を両立できるかと考えます。
さらに、座席下から冷風が吹き出すようダクトをアレンジできれば、窓からの換気と併せおよそ置換空調が可能となり、ラッシュ時の大きな省エネルギー化・空調効果向上をも可能にするのではないか、と考えます。
このように、既存の空調・換気システムを活用しつつ、気流の流路や方向等を変更し、置換空調とすることや、気流アレンジメントの手法を取入れることにより、猛暑など厳しい気温条件での、車内の空気感染防止を図ることが可能となります。
鉄道車両の空調換気設備の構成は、車両により、様々なバリエーションがあるようです。
ここでは、京王線の車両での空調換気設備の改造例を勝手に検討してみました。
通勤電車の多くは、空調設備として、満員状態での運転に対応できる大容量のヒートポンプパッケージエアコンを天井に備えており、ダクトレス化のため、換気設備の制気口も完全に分けていることが多いのではないかと思います。
このため、空調設備は、還気を再加熱(冷却)して室内を循環させているものと思われますが、空気感染防止の視点からは、空気を循環させず排出し、置換空調を行う方が安全となります。
上図の例では、外気接続口とパッケージエアコンの空気の吸込口とをカバーで被覆して連絡させ(ダクティングし)、外気接続口の排気ファンを電気的な方法または機械的な方法により反転させることで給気ファンとして機能させ、取り込んだ外気を直接加熱または冷却して車内に供給するようにしています。
ベンチ下部の壁面に新たに開口を設け排気ファンを設置することにより排気が可能となり、車両は高度な置換空調が可能となります。排気は乗降口脇や車両端部にて縦ダクトにより天井付近に誘導し、熱交換器により外気と熱交換を行うと、省エネ上も高効率とすることができます。
航空機
航空機の機内についても、遮断シート・パネルの設置や、気流アレンジメントを適切に計画し導入することにより、機内での感染の確率を大幅に抑制できるものと考えております。
(記事作成中)空調・換気による感染防止技術提案のページに戻る