換気量による感染防止
飛沫感染および高濃度のエアロゾルによる感染を防止するための仕切りや囲いの設置と、換気量を大きくすることを併用することにより感染防止を図ります。
換気量を大きくすると、拡散された感染者の呼気中のエアロゾルの濃度を迅速に下げることができます。
このように、換気量により感染防止を期する場合、従来の換気設備による換気量では不足するため、窓を開けっぱなしとしたり、新たに空調・換気設備を計画し直すことが必要になるものと思われます。
在室者数に対し、十分な換気量を確保する場合においても、近距離での相互の飛沫感染および高濃度のエアロゾルによる感染を防止するため、座席・客席間に仕切を設置することは必須と考えられます。
さらに、座席・客席前方にも仕切を設置し、各席をコの字型の平面を持つブース状に囲うことにより、感染の危険性は大幅に低減できるのではないかと考えます。
先ほども解説に用いた図です
座席・客席の背面も囲うと、さらに空気感染の恐れを低減できると考えられますが、高濃度エアロゾルを含む気流がブース後部に流出する量は小さいものと考えられるため、それほど効果は大きくなく、また、個室状となるため利便性が低下してしまいます。むしろ、手で仕切となるカーテンや扉を開け閉めするため、接触感染の恐れが発生します。
このため、ブース背面は開放して自由に出入り可能な構成とすることが合理的ではないかと考えます。
ブースやスクリーンにより一人ずつ隔て、空気を一定程度滞留させることにより、咳等による高濃度エアロゾルを緩やかに希釈しながら放出することができます。
ブース内の個別空調換気
ブース内をそれぞれ個別に換気すると、感染のリスクを大きく低減することができます。
基本的に、室内全体の空調換気(アンビエント)と、ブース内の個別の空調換気(タスク)による、タスク・アンビエント方式の構成とします。
多数の枝ダクトから、さらにホースで分岐させることなどにより、各ブース内に個別の空調換気システムを形成させることができます。これにより、室内全体で換気を行う方式に比較して、感染のリスクを大きく低減することができます。直天仕上(スケルトン/天井露し:天井を張らない仕上方法)とし、格子状のラックを組むと、比較的容易に設置することができます。
ブース内換気システムのタイプ
一種換気システムとすると、ブース内外の感染防止効果が最も大きくなります。二種および三種換気システムは、通路部分にほとんど人が留まらない場合に限られますが、少なくとも在席者同士では、大きな感染防止効果を期待することができます。
- 二種換気システム
- 三種換気システム
- 一種換気システム
各ブースの内部の空気を給気により押し出すシステムです。ブース内を新鮮な空気で満たすことができるため、ブース内は安全となりますが、通路や共有空間には、押し出された呼気を含む空気が流出するため、これらの空間では感染のリスクがあります。
各ブース内部の空気を排気するシステムです。呼気を含む空気は、局所排気され、通路や共有空間に拡散されませんが、通路や共有空間の空気が感染者の呼気を含む場合、ブース内の在席者が感染するおそれがあります。
各ブース内で空調換気を完結でき、外部との気流の流通が不要であるため、ブースを完全に閉鎖的な構造とすることも可能となります(法令等の要件があり、火災の危険性は増大しますが)。最も感染のリスクを低減できます。
条件により、これらの換気システムのうち適切な方式を選択します。
尚、ブース内の換気システムは、浮き床とすることによっても実現することができます。
詳細は避難所への適用例にて解説しております。→施設ごとの適用例→避難所を参照下さい。
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