津波等の水害時、陸・海・空からの強力な救助活動を展開できる防災救助拠点です。
津波救助装置のページで解説する避難路のネットワーク上に設けた避難施設であり、通常時は港湾の管理施設などとして、津波の被災時には避難施設兼救助活動の拠点として機能する施設の例です。
津波の襲来時、まずは何をおいても避難することが第一ですが、避難先が安全な場所であると同時に救助活動の拠点として機能できるものであれば、避難・救助の双方がメリットをもたらし合うことができます。避難先と救助の拠点を一元的にまとめ上げることの利点について、以下に示します。
体制が万全な拠点であること
まず、避難者にとって、救助活動の体制が整った避難先では、迅速に十分な保護や手当を受けることができ、重傷を負っていても、生存率を大きく高めることができます。
救助側にとっては、捜索や救助活動に赴かずに避難者の方から保護や手当等を求めてやって来るため、効率よく救助活動を行えることになります。人的にも物的にも集約した施設・設備の中で避難者の保護や手当等ができ、移動すら困難な中をあちこちの避難所を目指し散り散りになって十分とは限らない環境の中で活動を行うことと比較して、非常に効果的な保護や救命等の活動ができるものと思われ、二次災害の恐れも縮小できます。
一元的にアクセス可能な拠点であること
遭難者や避難者にとって、当拠点が避難路ネットワーク上の段階的な避難の最終目的地であれば、迷うことなく安全度を高めながら到達することができ、逆に、救助側にとっては、拠点との接続を保ちながら、段階的な避難のネットワークの枝葉側に安全・確実にアクセスすることができ、相互にとって利点の大きな構成とすることができます。
樹形図のような避難路ネットワーク上では総当たり的な捜索ができるため、津波救助装置部分に漂着していて動けない要救助者を確実に見つけて保護し、拠点に搬送することが可能となります。
つまり...
避難路のネットワークや防災・救助の拠点の構成について、クラウドコンピューティングのように、拠点を分散し、全体として機能不全に陥る危険性を低減する構成とすることも大きな利点がありますが、それとは逆に、上述のように、一元的に集約することにも大きな利点があると言えます。
そしてさらに、救助拠点は浸水時にも外部からアクセスできる必要がありますが、外部からアクセスできるということは、当該施設への避難者を更に外部に避難させたり搬送できるということでもあり、避難施設としても強力な機能を発揮できることになります。
このように、防災救助拠点を、段階的な避難路のネットワーク上の一元的な最終避難先として構成することにより、避難や救助活動に大きな威力を発揮し、また、その後の更なる避難や救助活動のための、人や物資の搬送のハブとして機能することができるものとなります。
配置・構成
海岸の業務地区と居住地区とを隔てる防潮堤を津波救助施設で覆うことにより海岸沿いのセーフティネットと避難路の動線を形成し、その上部に港湾の管理施設や展望施設などを兼ねた防災救助拠点を配置する例を示します。
通常時、防潮堤で隔てられた海側の風景を望める展望台やレストラン等として、また、港湾の管理・監視施設として活用することができます。
津波による浸水時には、防潮堤上部の津波救助装置が外洋側と内陸側を隔てる陸路となり、その陸路上の、また、浸水した外洋側と内陸側を結ぶハブとなる、防災救助拠点として機能できるようになります(両側が浸水した状態の場合)。
防災救助拠点は、屋上にヘリポート(規模により、離着陸可能またはホバリングのみとなります)を備えることにより空路を、津波救助施設の上部避難路により陸路(車両が通行できる構造や規模とすると、さらに救助活動を強化できます)を、津波救助施設の段状部分を岸壁として海上のルートを確保することができ、陸・海・空すべてのルートを用いた強力な救助活動が展開できます。津波救助施設の段状部分は、水位を問わず安全かつ簡単にボートを離着岸させることができるため、津波救助施設を台形の断面(引波対応型)の構成とすると、外洋側からも船舶で支援することができるようになります。
単独で長期間機能できる拠点
エネルギーの自給自足と物資の備蓄、外部とのアクセスが可能であることにより、地域が被災し電源喪失した状態でも、単独で、避難や救助の拠点として長期間機能し続けることができます。
近年の、太陽光発電設備や大容量の蓄電池設備、情報技術などの技術革新や普及の恩恵により、必要なエネルギーを完全に自給自足することは、それほど困難ではないと思われます。
この例では、屋上に太陽光発電パネルを設置し、屋内の専用スペースに収容された蓄電池に蓄電する構成を想定しています。
ヘリポートの床は、架台で浮かせたグレーチング敷きとし、その下部スペースにも太陽光発電パネルを配置することで、極力発電量を稼げるようにしています。
物資の備蓄に関しては、十分な容量の防災備蓄倉庫や物資を備えるだけでなく、テルファークレーン(天井クレーン)を装備し、クレーンレールに沿って自在かつ容易に重量物の出し入れができるものとしています。この例のように、作業テラスなどの荷捌き等のスペースを併せて備えると、救助活動の準備作業等がとても効果的に行えます。また、津波救助施設の上部避難路からヘリポートまで揚重可能なホイストなどを設置すると、さらに活動が容易になります。エレベーターを設置すると、負傷者の搬送も容易に行えますが、消費電力が大きい為、代替手段の検討が現実的かもしれません。
※無電力での要救助者の引き上げや揚重方法の提案については、「引き上げ装置」のページを参照下さい。
捜索・救助活動
捜索・救助活動は、陸(津波救助施設と上部避難路)・海(ボート)・空(ヘリコプターやドローン)から行うことができますが、捜索、監視、作業指示、ドローンの操縦等は、最上階の監視・制御室や捜索・監視テラスから行うと、見通し良く、位置や状況を把握しやすくなります。
大容量の投光器は、夜間の捜索や救助の準備作業等をサポートします。
同時に、遭難者にとっては灯台のような目印となり、また、励ましの灯ともなりうるものと考えます。
構造計画
浸水が予想される施設下部は、細く強靭なCFT柱によるピロティ構造とし、津波の水流を受け流しつつも(円形断面のCFT柱の採用は遭難者の津波救助装置への漂着を妨げず滑らかに誘導することにも繋がります。)上部の倉庫やヘリポートによる荷重を十分に負担できるものとしています。(※離着陸可能なヘリポートとする場合は大きな衝撃荷重を見込むことが必要となります。)
防災備蓄倉庫の天井面は逆梁または二重スラブによるRC造の面とし、テルファークレーンのレールを自由に配置できるようにしています。
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