雛壇状の造成地に津波救助施設を設置する場合の効果について解説します。
雛壇状の造成地の津波救助施設
職住近接としつつも居住地を高台に移転する場合などに雛壇状に造成する場合がありますが、このような地域では津波救助施設を併せて計画すると、非常に合理的かつ機能的な構成とすることができます。雛壇状の地盤の段差を利用するため、法面やその他のインフラ施設と用地を兼用しやすく、支持構造も簡易なもとのできます。また、津波救助施設自体も小型のものとすることができ、経済的な構成となります。
① 通常時
地域を雛壇状に造成すると、高さの異なる地域間の移動が分断されがちですが、崖線に沿って津波救助施設を設置することで、これら高さの異なるエリア同士をシームレスに接続し、地域全体のコミュニケーションや機能を活性化することができます。
また、津波救助施設は、散歩道、公園や近隣の憩いの場所としての機能を提供できます。高台と言えば、眺望が良いイメージがありますが、実際は法面付近まで住宅が建て込むことが多く、眺望が良い場所は限られるのが実情でしょう。しかし、この例のように津波救助施設を設置すると、歩行者向けの公共空間(津波救助施設)が形成され、地域の住民の方が誰でも眺望のある生活を楽しめるようになります。さらに、図の例では、法面の緑地を活用し、漂流物ガードや延焼防止帯を兼ねた樹林帯を併せることで、まとまった広さの散歩道や公園を形成しています。広範囲に及ぶ、安全で気持ちの良いサイクリングコースを構成することもできます。
② 浸水時1
津波救助施設は、およそ一定の間隔を空けた平行な配置となるため、津波の襲来時、津波救助施設に挟まれた各地域では、一定以内の距離での避難が可能となります。津波救助施設上部への避難後は、当該上部避難路を経由し、上部避難路から渡り廊下等で接続する、より安全な津波避難ビルなどに避難します。なお、図の例では、根張りの良い樹木による樹林帯を漂流物ガードとして利用しています。
③ 浸水時2
津波救助施設の配置間隔が小さいため、逃げ遅れて水流に呑まれた遭難者の当施設への漂着を早め、また、漂流物の量も限定されるため、他の設置条件と比較して、安全性を高くできます。
④ 引波時
雛壇状に造成された高台側の地域は、浸水はしにくくなるものの、高低差により水がはけやすいため、万一浸水した場合、通常の地形に比較して引き波が強くなることが考えられます。
津波救助施設を設置することで、遭難者の海側への流出を防止する構成とすることができます。津波救助施設は引き波対応型とします。
水が引いた後は、避難時とは逆に、避難先の津波避難ビル等から、転落防止装置により保護されている遭難者の救助に向かうことができます。
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