オフィス・事務室
気流アレンジメントの解説ページにて示した構成例に、机や座席、パーティション、空調換気設備を落とし込んで計画したオフィスレイアウトの例を示します。
このように一方向流を発生させ、空気感染を防止するオフィスレイアウトを計画してみます。
各席をブース状に囲い、それぞれにドラフトチャンバー状の空間を形成させることにより、呼気を外部に漏らさず排出することができます。
当然、背面も囲った方が感染防止には効果的と考えられますが、通常、煙感知器の設置等、消防・火災予防に関する要件が発生します。
現在のところ、コロナウィルスの感染力は解明されていないため、どの程度の感染防止対策を講じる必要があるのかが分かりません。このため、以下に、パーティション等の設置による感染防止策の例を、複数レベルにて示します。段階的に感染防止レベルが上がる順に並べています。
呼気を遮るものが何もない状態です。席同士の距離にもよりますが、マスクを着用せずに大声を発生したり、咳やくしゃみをすると、簡単に感染させる可能性があります。
PCを置くだけでも、向かい合う人同士の飛沫を遮断する効果は意外に大きいかもしれません。 ※フリーアドレス制など、互いの席・PCを利用し合う環境では、キーボード、マウス、机上は、見えなくとも飛沫で汚れており、人が入れ替わる都度、消毒するルールなどとすることが大切かと考えます。
従来の、一般的な目隠しのパーティションです。目線程度の高さのものが多いため、マスクを着用しない状態で、やや上向きに咳をしたり、向かいの座席に話しかけたりすると、吐く息の噴流や飛沫が対面する席の人にかかり、感染するリスクがありますが、このパーティションだけでも、感染の危険性は大幅に低減されているものと思われます。
レベル2のパーティションに加え、隣席間にもパーティションを設置した例です。こちらも一般的なパーティションの構成ですが、感染予防効果は当然さらに高まるものと考えられます。着席した状態での作業中は、通常、正面を向いているため、咳・くしゃみ等による噴流は正面に向かいますが、正面のパーティションに衝突した噴流は、上下左右に拡散します。このとき、隣席間にもパーティションが設置されていれば、隣席同士の感染のリスクは低減できます。
また、机上はコの字型の平面を持つ閉鎖的な空間となるため、気流が対流し、室内の気流の影響を受けにくくなり、高濃度エアロゾルが拡散しにくくなるものと考えられます。
但し、隣席の人と向かい合って会話をしている間は、当然感染の可能性が高くなります。また、マスクを着用している場合、咳やくしゃみの正面方向への噴出は遮られますが、通常のサージカルマスクの場合、上下や側方には一定量の飛沫が噴出するようですので、側方へ吹き出した噴流や飛沫による隣席への感染のリスクは一定程度存在するものと考えられます。
レベル3の場合、パーティションの高さが低いため、室内全体の気流はほとんど遮られず、パーティションを越えて流れるものと思われます。このため、感染者が排出する高濃度エアロゾルは、気流に乗って広く伝達されるものと考えられます。
これに対し、パーティションを高くすると、当該気流は一定程度遮断することができます。さらに、レベル2で示した、机の背面のパーティションの高さを大きくし、上方に排気口を設置することにより、当該排気口に立ち上る上昇気流を誘導することができ、島をまたいで流れる室内全体の気流の速度に対して優勢とすることで、島をまたがせないようにすることができます。これにより、室内全体での空気感染を防止することができます。
レベル4でのパーティションを天井まで突き付け、隣席間のパーティションは袖壁状に拡大しています。
また、この袖壁状のパーティションの上部には垂れ壁を設置しています。
※パーティションは天井面まで立ち上げると、消防法に則った届出が必要となります。
尚、垂れ壁や天井に突き付けるパーティションは、防煙区画の一部として計画すると合理的かと思われます。
これらにより整流される気流や空気感染防止の効果については、次に解説します。
レベル5とした場合の、空調換気設備や気流の流路を示しています。
各席はブースを形成し、通路側に吹き出した給気がこれらのブースに吸い込まれる構成とすることにより、流路上での空気感染を防止します。
※通路部分に人がいる場合は感染のおそれがありますが、通路部分は基本的に人が長時間とどまらないものとして検討しています。
また、各席のブース入口上部に垂壁を設置することにより、給気が天井を伝って直接排気されるショートサーキットを防止しつつ、ドラフトチャンバー同様の効果を提供します。これにより、着席者の周囲を通過する、一定以上の風速の、安定した一方向流が維持され、より確実に感染防止を図ることができます。
ブースが構成されることにより、各席はプライバシーが向上し、プライベートスペースの性格を帯びるため、好みに合わせたデコレーションが可能となります。
従来の日本のオフィス環境は、恐ろしく無機質でしたが、これからは、従業員の個性や多様化を積極的に受容する姿勢を持つことも大切なのではないかと考えます。
※規模や用途によっては、消防法により、防炎カーテンの使用が義務付けられます。
空調・換気による感染防止技術提案のページに戻る