フェンスタイプの津波救助装置の断続配置によるセーフティネットの構成方法
フェンスであればほとんど設置スペースを要さず簡単に設置できますが、線路敷等の連続した敷地がない場合、長大な施設の形成は困難であり、また、通常の地域では、道路等により津波救助施設は分断されることになります。
さらには、津波等の襲来時には大量の漂流物が発生するため、漂着した遭難者の漂流物に対する安全確保も必要となります。
こういった現実的な背景を踏まえ、断片的に配置されながら、安全で有効なセーフティネットを構成する、フェンスタイプの津波救助施設の配置例を示します。
配置する津波救助装置について
このページの施設構成例では、支柱の間隔を小さくして車両等の漂流物に対するフィルタ―の機能を持たせた、漂流物ガード機能付きのフェンスタイプ津波救助装置を用いています。
※フェンス状の津波救助装置についての詳細は、「津波救助装置の構造例」のページを参照下さい。
時系列による解説
① 配置・構成(通常時)
このフェンスタイプの津波救助装置は、浸水時に水流を受けて回転して津波救助装置として機能するため、浸水前の初期避難先として計画せず、基本的に浸水後のセーフティネット専用の津波救助施設群として計画します。
津波救助装置は、基本的に端部を津波避難ビルや津波避難タワー等に接続させ、装置に漂着して救出された遭難者が、より安全なこれら津波避難ビル等に二次的に避難できるようにします。
フェンスタイプの津波救助装置は、設置可能な敷地毎の個別の配置とすることができます。但し、これらの個々の津波救助装置が、津波等の襲来時に予想される水流の方向に対しては互いに重なり合う配置とし、極力連続したセーフティネットが形成されるよう計画します。
上図の中央部の津波救助装置のように、津波避難ビル等に接続しない津波救助装置を含めた構成とすることもできます。
津波救助装置の端部の上部にロープ(「渡りロープと」言います)を備えておくことにより、漂着した遭難者は、このロープにつかまりながら、水流の下手側に隣接する津波救助装置に渡ることができます。
この場合、少なくとも最下流となる津波救助装置は、津波避難ビル等に接続させることが必要となります。
また、この例のように、引波対応型とする場合、引波時の最下流となる津波救助装置も、津波避難ビル等に接続させます。
多数の独立した津波救助装置を図のように雁行配置させ、両端の津波救助装置のみ津波避難ビル等に接続させる構成とすることもできます。
尚、浸水前の初期避難は、津波救助装置の端部が接続する津波避難ビルに、直接避難します。
② 寄波浸水時1
フェンス状の津波救助装置は、支持機構の構造により、浸水すると、下部を回転軸として回転します。係止機構により一定量回転した位置で保持されることで、津波救助装置として機能できるようになります。
この例で用いている津波救助装置の場合、支柱とケーブルにより、一定量回転した津波救助装置の面状の部分が係止され、面状の部分に作用する、水流や漂着した遭難者等による荷重を、地盤に伝達する構造としていますが、これらの支柱とケーブルは、そのまま車両等の漂流物に対する漂流物ガードに兼用することができます。この漂流物ガードにより、漂着した遭難者が漂流してきた車両等に圧迫されることを防止できます。
しかしながら、家屋等の大型の漂流物に対応するのは困難なため、津波救助装置の水流の上手側には鉄筋コンクリート造などの建築物、根入れの大きな電柱、根張りの大きな樹木等を配置し、大型の漂流物をフィルタリングできるようにします。
③ 寄波浸水時2
漂着し水面に押し上げられた遭難者は、津波救助装置の上部を水平方向に移動し、直接接続する津波避難ビル等に避難、または、水流の下手の津波救助施設に渡りロープを流して伝って渡ることを繰り返し最下流の津波救助装置が接続する津波避難装置に避難します。
尚、渡りロープは、小さな間隔で結び目を作っておくなどすると、握力に頼らずにつかんでおけるため、安全に移動できるようになります。また、ロープなしでも水流の下手の津波救助装置に漂着できますが、漂着時は衝撃を受けるといったリスクがあるため、ロープ等につかまりながらの移動が好ましいと考えます。
④ 引波時1
引波に切り替わると、津波救助装置の面状の部分は水流を受けて反転し、引波に対して有効な津波救助装置として機能できるようになります。
⑤ 引波時2
寄波時と同様、水流の下手の津波救助装置へは、渡りローブを流して移動します。
このように引波対応の構成とする場合、寄波時と同様、少なくとも最下流となる津波救助装置は津波避難ビル等に接続している必要があります。
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